古物商の許可
「リサイクルショップを始めたい」「国内で仕入れた中古車を海外へ輸出したい」「古本屋を始めたい」など、古物の売買、交換等を目的とする事業をはじめるには、都道府県公安委員会から古物商の許可を取得する必要があります。
はじめに
ちなみに無許可営業は古物営業法第3条により、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。くれぐれもご注意ください。また、法人が古物商を行うには、当該法人が許可を取得しなければなりません。許可を取得している個人事業主が法人成りしたからといって、当然に許可を引き継げるわけではありません。法人として改めて許可を取得し、個人事業主としての古物商許可証は返納します。
そもそも、何故、古物商許可が存在するのかというと、盗品が市場に紛れ込んでくるのをチェックする必要があるからです。
古物営業法1条には次のように規定されています。「この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。」
万引きや盗難が関連するので、管轄は公安委員会や警察署なのですね。
古物13品目
そもそも古物とは何でしょう。一度使用された物品や、新品でも使用のために取引された物品、及びこれらのものに手を加えた物品のことを「古物」といいます。
古物営業法施行規則により、古物は下記13品目に分類されており、許可申請の際には、この中から取扱品目を選択し、登録します。
1.美術品類(例・・・絵画、彫刻、工芸品、掛け軸、登録日本刀、アンティーク)
2.衣類(例・・・婦人服、紳士服、子供服、着物、帽子)
3.時計・宝飾品類(例・・・時計、宝石、貴金属、眼鏡)
4.自動車(自動車部品も含む)
5.自動二輪車及び原動機付自転車(部品も含む)
6.自転車類(部品も含む)
7.写真機類(例・・・カメラ、レンズ、顕微鏡、天体望遠鏡、双眼鏡、光学式機器)
8.事務機器類(例・・・パソコン、周辺機器、コピー、FAX、電話、複合機、レジスター)
9.機械工具類(例・・・工作機械、土木機械、医療機器、工具)
10.道具類(例・・・家具、スポーツ用品、CD、DVD、楽器、ゲームソフト、玩具)
11.皮革・ゴム製品類(例・・・鞄、靴、毛皮、タイヤ)
12.書籍(例・・・文庫本、雑誌、写真集、地図)
13.金券類(例・・・切手、印紙、商品券、航空券、ビール券、各種チケット)
なお、明確に該当するものがない場合は、最も近い分類で登録申請します。
また、古物商許可申請の際、申請する種類が多くても別途料金を頂くことはありませんが、警察署が必ず申請を受理してくれるとは限らない点はご了承ください。
また、古物商における行商の位置付けですが、路上や公園での古物の販売や相手方住居における取引など営業所以外の場所で古物商を営む事を行商といい、その場合には、許可の内容が「行商する」を選択していることが必要です。
なお、古物商許可が「行商する」を選択している場合でも、古物を買い受ける場合には、買い受ける場所に制限があります。一般人から、古物を買い受けたり、交換したりする行為は、「自身の営業所」、「相手方の住所等」、「古物市場」でなければできません。出店先での買い取り行為は違反です。
古物営業法における古物取扱業者の分類
古物営業法において、古物取扱業者は、古物商(1号営業)、古物市場(2号営業)、古物競りあっせん業(3号営業)に分類されています。
以下、それぞれの内容をご紹介します。
1.古物商(1号営業)
都道府県公安委員会の許可を得て、一般的な古物取引を行う取扱業者です。不要になった自己所有商品を、フリーマーケットで売る場合には、古物商許可は不要です。同様に、不要になった自己所有商品を、インターネットで売る場合は古物商許可は不要ですが、転売する目的で古物を購入して売る場合には、古物商許可が必要になります。
2.古物市場主(2号営業)
古物商同士の古物の売買や交換を行う市場のことです。
3.古物競りあっせん業(3号営業)
インターネットオークションにおいて、古物の売買をしようとする者の競りあっせんを行うシステムを提供する営業のことです。
平成15年の古物営業法改正において、古物商がインターネットを利用して古物の取引を行う場合は、WEBサイトに氏名又は名称、営業許可をした都道府県公安委員会の名称及び許可証番号の表示が義務化されると共に、都道府県公安委員会へホームページアドレスの届出が必要になりました。
申請手続と手数料
古物商許可申請書類は、主たる営業所を管轄する警察署防犯係に提出することになります。もし、複数の都道府県に営業所を設置する場合は、それぞれの都道府県への許可申請が必要になります。
申請の際、警察署会計係窓口で納入する手数料が、19,000円かかります。申請書類に問題がなく、欠格事由に該当していなければ、およそ1~1.5ヶ月で許可証が交付されます。
ちなみに、古物競りあっせん業の届出は手数料がかかりませんが、古物競りあっせん業の認定申請には、17,000円の手数料がかかります。
当事務所の手数料は、以下の2種類です。
1.総合コース
書類作成から警察署への申請まで全て代行します。52,500円
書類提出の関係で、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県の対応です。
2.書類作成コース
当事務所は書類作成のみを行い、警察署への提出は、お客様が行います。42,000円
当然、全国どの地域でも対応可能です。
なお、申請の際、役員の住民票、身分証明書や登記されていないことの証明書、あるいは法人の登記事項証明書を添付しなければなりませんが、それら証明書の取得費用も発生しますので、ご注意ください。当事務所にて、取得することを希望される場合は、取得費用の他、交通費等の実費を申し受けます。
必要な物・・・法人の場合
1.古物商許可申請書
2.最近5年間の略歴が記載された書面
3.住民票の写し
4.誓約書
5.登記されていないことの証明書(法務局、地方法務局の本局で取得)
6.身分証明書(本籍地の市役所で発行)
上記2~6は会社の役員及び管理者全員分が必要です。
7.定款
8.法人の登記事項証明書
9.賃貸借契約書など営業所の使用権限を証する書面
10.営業所の見取図
11.営業所の周辺図
その他、インターネットを使用して古物営業を行う場合は、別途のホームページアドレスの使用権限を証する書類が必要になります。
なお、管轄警察署により必要書類が多少異なりますので、警察での事前協議が必要になります。
なお、古物商の許可取得後にしなければならないことを列記します。
1.古物台帳の設置
取引金額が1万円以上の場合、取引年月日や品目や数量、古物の特徴、相手の住所、氏名、職業といった項目を記録した古物台帳を、記録した日から3年間は保存しなければなりません。これらに違反した場合には6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
2.標識の備付
古物商の許可を受けた者は、その営業所の見やすいところに標識を掲載しなければなりません。標識には、「・・・公安委員会許可」という文言以外に、許可番号や取り扱う古物の種類、許可された者の氏名といった情報が記載されています。
3.なお、古物商及び古物市場主は、以下の事項について変更があった場合は、14日以内(法人の場合で変更事項に関する登記事項証明書を添付する必要のある場合は20日以内)に公安委員会に変更の届出をしなければなりません。
ア.営業者の氏名及び住所又は居所(法人の場合は名称、所在地及びその代表者の氏名)
イ.営業所又は古物市場の名称及び所在地
ウ.取り扱う古物の区分
エ.管理者の氏名及び住所
オ.行商の有無の変更
カ.役員の氏名及び住所(法人の場合)
あと、当然のことですが、古物商をおやめになる場合は、許可証を返納しなければなりません。
許可要件と欠格事由
古物商許可は、特定の資格が必要な訳でもなく、必要な添付書類を用意して許可申請すれば、誰でも取得可能な許可です。しかし、一定の場合には古物商許可が受けられない場合があります。それが以下の5つの欠格要件です。
1.成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
2.禁錮以上の刑に処せられ、又は一定の犯罪により罰金の刑に処せられて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
3.住居の定まらない者
4.古物営業の許可を取り消されてから5年を経過していない方
5.営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
また、法人の場合で、役員に上記1~5の該当者がいる場合は、許可を取得できません。
2における「一定の犯罪により罰金の刑」の一定の犯罪とは、背任罪や遺失物・占有離脱物横領等の刑法犯罪と古物営業法違反の内、無許可営業、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令違反が挙げられます。
よく外国人でも許可を取得できますかという質問を受けますが、外国人であっても許可取得はできます。ただ、在留資格によっては許可取得できない場合もあります。在留資格の種類が、投資経営・永住者・定住者・日本人の配偶者等であれば全く問題ありません。
あと、欠格事由というわけではありませんが、個人として許可取得された方が死亡した場合は、親族や法定代理人が古物商許可証の返納しなければなりません。