定款を作りましょう
定款は会社の憲法ともいえる大変重要なもので、その作成には守らなければならないルールもあります。会社設立PROでは、自分で会社を作りたい方の参考となるよう、定款のサンプルも提供しています。
定款の種類
会社を設立するには必ず定款を作成しなければなりません。内容が法令に違反していないことは当然ですが、発起人全員の合意もなければなりません。
新会社法施行後の定款作成例を眺めてみますと、大体、一人取締役会社で30~40の条文数。取締役会設置会社で35~45くらいの条文数の定款が多いです。
ですが必ずしもその条文数を用意しなければならないわけではなく、会社の実情に応じて作成すれば大丈夫です。
1.必ず盛り込まなければならないのが絶対的記載事項といわれるもので、会社法の27条に規定されています。
- 目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
書き出してみると、案外少ないものです。
2.次が相対的記載事項といわれるもので、定款に記載しなければ効力が生じません。
- 現物出資や発起人の報酬などの変態設立事項
- 株式の譲渡制限
- 代表取締役や監査役、会計参与等を置く旨
- 設立時の取締役や監査役、代表取締役の氏名
- 取締役が株主でなければならない旨の定め
- 役員の任期の伸長
- 役員の責任の免除に関する定め
- 監査役の監査範囲を会計監査に限定する旨の定め
- 株券を発行する旨
- 種類株式の発行
- 株主総会・取締役会の招集の場所、決議方法、招集期間の短縮
- 取締役の任期延長
- 取締役の選任についての累積投票の排除
- 議決権の代理行使の代理人の資格の制限
- 剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定め
- 利益配当の除訴期間
- 株主名簿の閉鎖と基準日の設定
などなど、沢山あります。
3.最後に任意的記載事項といわれるものです。公序良俗、法令の強行規定に違反しなければどのような事項も定めることができます。
- 営業年度
- 役員の数
- 配当金に関する事項
- 総会の開催時期
- 公告の方法
などです。
定款の書式はとくに決められていないので、市販されているものを使用したり、当事務所で無料提供しているサンプルを使用したり、自分で1からつくったり出来ます。ただし以下の5点に注意しましょう。
1.「絶対的記載事項」や「相対的記載事項」など、法律上、会社経営上必要な事項を必ず記載する。
2.発起人全員が実印で押印する。
3.同じ内容のものを3部作成する
(公証役場保管用、会社保存用、登記申請用)
4.氏名住所は、印鑑証明書に記載されている通りに記載する。
(例:「広沢」と「広澤」の違いや、住所を略して「2-1-1」のように記載してしまうのはNG)
5.定款が出来たら、ホッチキスで閉じ、全てのページのつなぎ目に発起人それぞれの実印で契印します。
また、公証役場に行ってから間違いが発見された場合、間違った部分に二重線を引いて消し、その上に正しい文字を記載します。必ずもとの文字が読めるように訂正しなければなりません。さらに、そのページの上部に、「○字削除、○字加入」と記載し、発起人全員の実印による訂正印を押します。
万が一の訂正に備えて、訂正箇所がないと思っても定款の各ページには発起人全員の捨印を押しておきましょう。こうすることによって、訂正印を押せば間違いを修正できるようになります。
当事務所が公開している定款のサンプルを原案に、商号や所在地、目的など、自身の会社の設立内容に修正していく方法が最もスマートでしょう。
定款認証
定款の作成が終わったら、公証役場で定款認証を受けなければなりません。定款は、公証人の認証を受けて初めてその効力を発します。
<どこで認証すればいいのか>
公証役場については、設立会社の本店を管轄する法務局管内にあればどこでも認証を受けることができます。
例えば、東京都内で会社設立をする場合には、東京都内(東京法務局管内)にある公証役場でしたら八重洲公証役場でも渋谷公証役場でもどこで定款認証を受けても構いません。以下のサイトで、近くの公証役場を探して行きましょう。
<誰が行くのか>
原則として発起人全員が役場に行って定款の認証を受けなければいけません。しかし、発起人や社員が複数いる場合、全員が役場に行くのは困難でしょう。
その場合は発起人や社員の中から代表者を選び、代表者一人が役場に行けばいいことになっていますまた、第三者を代理人として認証を受けることも可能です。
<最終チェック>
①類似商号は大丈夫か
同一の住所に同一の商号があることは、ほぼありえないことですが、絶対に無いとはいいきれませんので、心配な方は調査しておいたほうが良いでしょう。
②目的の適格性は問題ないか
違法性、営利性、明確性をクリアしているか、再度確認しましょう。心配な方は、管轄の法務局まで行き、この内容で申請が通るかどうか、アドバイスを受けましょう。
>> 事業目的をきめる
③役員、発起人の住所は間違っていないか
印鑑証明書に記載されている通りに記入しましたか?2丁目1番1号と2丁目1番地の1など、微妙に違う場合がありますので、注意が必要です。
ちなみに、公証へ行く前に行く予定の公証役場に定款をFAXで送り、内容を確認してもらって、問題がなければ認証しに行く、という手続きを踏んだほうが、より失敗の可能性が少ないでしょう。
<定款認証に持参するもの>
- 定款3通(公証役場保管用、会社保管用、登記申請用の3通)
- 発起人の印鑑登録証明書1通ずつ
- 収入印紙4万円分(公証役場保管用の定款に添付します)
- 認証手数料5万円
- 謄本交付手数料1ページ250円×ページ数
- 委任状(全員が公証人役場に行くことができない場合)
- 公証役場へ行く発起人の実印(代理人の場合はその代理人の実印)
※発起人が法人の場合、法人の登記簿等謄本が必要です。
>> 委任状サンプル
定款の認証が終わると3通のうち1通は公証役場に保存され、会社保存用原本として1通、登記用謄本として1通がそれぞれ戻ってきます。
就任承諾書の作成
役員(取締役や監査役)の選任された人が、その役員への就任を承諾しましたという内容であればOKです。定款が認証された日以降の日付で記載します。
原則、役員全員分の就任承諾書が必要ですが、発起人が役員に就任する場合は就任承諾書を作成せずに、設立登記申請書類に「就任承諾書は定款の記載を援用する」と記載して済ますことも可能です。定款には出資者である発起人の押印がありますので、定款認証の時点で就任を承諾したものとみなすことができるからです。
ただし発起人(出資者)以外の者が役員となる場合は、必ず必要となります。
その者の住所氏名等は、印鑑証明書に記載されている通りに記入しましょう。氏名の横には実印で押印が必要です。
サンプルはこちらからダウンロード出来ます。
本店所在地決定書
『本店を決める』のコーナーでも詳しく説明しておりますが、定款に本店所在地を、行政区単位までしか記載していない場合は、この書類を添付する必要があります。
例えば定款に
当会社は、本店を千葉県市原市に置く。
としか記入してない場合、本店所在地決定書にて
本店所在地 千葉県市原市君塚2丁目1番1号
が、本店の正確な住所です、ということを決定しなくてはいけません。この書類の添付が面倒な場合は、定款に
当会社は、本店を千葉県市原市2丁目1番1号に置く。
と、書いてしまえば良いわけです。将来、本店所在地を変更した場合に、行政区単位までの記載にしておくと、いちいち定款を書き換えなくてもよいというメリットはありますが、はたしてそれがメリットなのかどうかも微妙なところです。
定款を書き換えるのは、ワードが使えれば一部分だけ修正して、常に最新の定款へとバージョンアップして保存することは、いまや簡単なことですし、紙定款そのものに、線を引いて直接変更部分だけを手書きで書き加えていく方もおりますし、ようするにたいした手間ではないのです。
定款を変えようが変えまいが、本店所在地が変更になったら、必ず変更登記をしなくてはいけませんし、それには最低3万円の登録免許税がかかりますから、かえってそのほうが手間です。大切なのは、変更の可能性が低い住所を登記することだと思います。
いずれにしても、本店所在地の記載方法は、どちらが良いかといわれたら、正直どちらでも良いかなと思います。ご自身のお好み方法をご選択ください。
>> 本店所在地決定書サンプル
※本店所在地決定書に記載する日付は定款認証を行った日にするのが最も良いでしょう。
また、定款に本店所在地の詳細を記載しておらず、更に設立時代表取締役を選任していない場合の決議書サンプルはこちらからどうぞ。(設立時取締役選任及び本店所在場所決議書サンプル)
代表取締役選定決議書
取締役会設置会社において(3名以上の取締役に加え、監査役あるいは会計参与を設けなければならず、必ず代表取締役を専任しなくてはならない)は、設立時取締役のうちから設立時代表取締役として選定された者が会社を代表することとなるため、取締役会を開き、設立時代表取締役を選任しなければなりません。
そこで決まった内容に基づき、設立時代表取締役決議書を作成し、登記書類の添付書類として提出します。
日付は定款認証の日にするのが最も良いでしょう。
また、取締役会を設置しない、1人~3人の会社でも、定款に設立時取締役を定めていない場合は、この決議書を提出する必要がありますので、定款にはしっかり書いておいたほうが面倒がなくてよいでしょう。
また、定款に本店所在地の詳細を記載しておらず、更に設立時代表取締役を選任していない場合の決議書サンプルはこちらからどうぞ。(設立時取締役選任及び本店所在場所決議書)
自分で会社を設立する場合、できる限り作成する書類は減らしたほうが良いと思いますので、定款に本店所在地の詳細を記載し、かつ設立時代表取締役を選任しておくことをオススメします。
取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 | |
機関設計の選択肢 (中小会社) |
監査役か会計参与のいずれかの設置が必要 | 監査役の設置は任意 |
取締役の員数 | 3名以上 | 制限なし |
代表取締役の選定 | 必要 | 任意 |
業務執行権限 | 代表取締役及び業務執行取締役 | 各取締役 |
株式の譲渡制限 | 自由 | 発行するすべての株式につき、譲渡制限が必要 |
譲渡制限株式、譲渡制限新株予約権の譲渡承認機関 (会社法139条1項・265条1項) |
取締役会(定款による別段の定めは可能) | 株主総会(定款による別段の定めは可能) |
取締役の競業取引及び利益相反取引の事後報告 | 必要(会社法365条2項) | 不要 |
株主総会の権限 | 法定事項のほか、定款で定めた事項に限り、決議することができる(会社法295条2項) | 法定事項のほか、会社の組織、運営、管理その他一切の事項について決議することができる(会社法295条1項) |
書面投票等を行わない株主総会における招集通知の発出期限 | 公開会社では2週間前 非公開会社では1週間前 |
定款をもって1週間からさらに短縮可能 |
書面投票等を行わない株主総会における招集通知の方法 | 書面または電磁的方法 | 方法に限定なし |
招集通知に示されない議題に関する決議 | 不可 | 制限なし |
議決権の不統一行使の事前通知 | 必要(会社法313条2項) | 不要 |
定時総会の招集通知の際における計算書類等の提供 | 必要 | 不要 |
中間配当の実施 | 可能 | 不可(会社法454条5項) 但し、臨時株主総会の決議により、期中に剰余金分配を行うことは可能 |
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