合同会社のメリットについて
合同会社は、平成18年(2006年)商法改正、それに伴う商法第二編の分離・増補改定において新たに設けられた新法「会社法」(平成17年(2005年)7月26日公布、平成18年(2006年)5月1日施行)を根拠に新たに設けられた会社形態です。
合同会社の特徴
①有限責任
合同会社は、悪意または重大な過失があるときや不法行為等によって生じた損害を除き、一般的には出資者が出資額を限度として責任を負う有限責任です。出資を約束した金額ではなく、あくまでも実際に出資した金額までの有限責任となります。
例えば、1000万円出資した民法上の組合が、何かの訴訟で訴えられ負けてしまうと出資者は1000万円以上の責任を負うリスクがありました。しかし、合同会社は、有限責任なので事業に失敗した場合でも自分の出資金が戻ってこないだけで済みます。ですから、様々な事業へチャレンジしやすいのです。ただし、合同会社は、有限責任であることを対外的に明らかにするため、財務諸表の作成義務等があります。
②内部自治
内部自治とは、組織の内部ルールが、法律によって詳細に定められるのではなく、出資者同士の合意により自由に決定できることです。ようするに、出資者が自ら経営を行い、組織内部の取り決めが自由にできるということです。 具体的な例としては、2つ挙げられます。
1つ目は、合同会社は特定な取り決めをすれば出資比率によらず、柔軟な損益や権限の分配ができることです。 原則は、会計帳簿に記載された各組合員や社員が履行した出資の価額によって決まります。しかし、合同会社は、書面で取り決めれば、出資比率に関わらず、事業への貢献の度合いなどに応じて損益や権限の分配を自由に決定できます。出資者のノウハウの提供や労務などに応じて、分配をすることができるということです。
また、特定の社員に意思決定の権限や損益の分配を集中させることも可能です。株式会社では、株主平等原則に従い原則として出資比率に応じた損益や議決権(権限)の分配が強制されています。だから、合同会社が出資比率に応じなくてよいというのは、大変画期的です。
③社員
合同会社では社員1人のみでの設立、存続が認められます。合同会社の役員は、『業務執行社員(経営に参加する出資者)』と『社員(経営には参加しない出資者)』の2種類に分かれることになります。業務執行社員が複数人存在し、合同会社の代表者を定める場合は業務執行社員から『代表社員』を選ぶことになります。
④意思決定
合同会社は株式会社や有限会社と異なり、原則として、すべての社員(出資者)に合同会社の代表者としての業務執行権と代表権があります。よって「取締役」とか「監査役」と呼ばれる地位は存在しません。したがって、ほかの企業との取引などでは、ひとりひとりの社員(出資者)の名前と印鑑だけで契約を取り交わすことができるのです。(※ここでいう「社員」とは、「出資者」のことであり、会社で雇う「従業員」のことではありません)株式会社や有限会社でいえば、出資者全員が代表取締役になっているのと同じなのです。
定款で別段の定めがない限り、会社の経営に関する意思決定は、原則として社員全員の過半数の同意により行われます。しかし全ての出資者が会社の代表権を持ってしまうというのはいろいろと不都合も考えられます。
ですから、出資者が希望すれば様々な機関を設けることが出来ます。それを定款に定めれば良いことになっています。
例えば合同会社は、『社員(出資者)全員が業務執行に当たりその意思決定は過半数をもって決する』とされていますが、これとはべつに、『特定の社員を業務執行社員(役員)とし、さらにその中から代表社員(社長)を定める』ことができるとされています。
つまり、業務執行社員と代表社員を設け、出資者である一般社員とはべつに実際の合同会社を経営する組織運営が可能なようになっており、こういった形で設立するのが現実的だと思います。
⑤財務諸表の作成義務
会社設立時に貸借対照表を作成し、毎事業年度ごとに貸借対照表、損益計算書、社員持分変動計算書を作成し、10年間保存する義務があります。
合同会社のメリット
①設立費用が安い
株式会社の場合、トータルで26万~30万前後。合同会社の場合10万~14万程度で設立できるので、気軽に設立出来る点が大きな魅力だと思います。
②自由な損益配分
株式会社では、出資した割合によって会社の利益が配当されるという規定がありますが、合同会社では、出資の割合に関係なく、能力、技術を持った人に対し、定款によってその人が多くの利益配当できるよう、権利を持たすことが可能になります。
③役員の任期が無い
株式会社と違い、合同会社の役員には任期がないので、任期延長の登記をする必要がありません。ただし、『役員が別の人間に変更になった場合/役員の氏名が変わった場合/役員の住所が変わった場合』は変更登記しなければなりません。
④決算公告の義務が無い
株式会社では、決算期ごとに決算の数字を公表することが義務づけられています(貸借対照表等を公表しなければいけません)。合同会社の場合は、決算公告の必要がございません。しかし、合併や株式会社への組織変更の際、公告する必要が生じます。その場合、官報ですと6万円程度ですが、電子公告を行う場合、公告期間中、電子公告が適法に行われたかどうかについて、法務大臣の登録を受けた調査機関の調査を受けなければならないとされています。その調査機関への費用が最低でも17万ほどかかります。参考:電子公告制度について(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji81.html)
よって、官報による公告を選択しても、通常、公告費用がかかることはございませんので、当事務所へご依頼いただいたお客様へは”官報”による公告をオススメさせていただいております。
合同会社のデメリット
①知名度が低い
2006年5月の新会社法施行とともにスタートした合同会社。うなぎのぼりに合同会社の知名度や需要はあがっていますが、それでも株式会社に比べると知名度が劣ります。設立後すぐに、会社の名前を大々的に売り出して、営業のツールの一つとして使用する場合は、現時点では株式会社のほうが適しているでしょう。しかし、今後さらに合同会社の設立件数は増えることが予想されますので、徐々に知名度はアップしていくと思います。
②株式会社への組織変更が少し面倒
どの情報サイトでも、合同会社から株式会社へは簡単に組織変更できると書いていますが、実際には組織変更する際には『公告』をしなければならず、方法が官報の場合は、官報に株式会社へ組織変更の旨を掲載し、1ヶ月間異議申し立てがなければ、そこで初めて承認されます。ですから、最低でも株式会社への変更には1ヶ月かかると考えたほうが良いでしょう。官報への掲載費用は6万円です。更に株式会社へ変更する際にかかる登録免許税が合計6万円。そして専門家に変更登記を依頼する場合は、その費用もかかりますので、決して安くはありません。
合同会社が向いている人
①個人事業から法人成り(1人~少人数)
特にインターネットを利用した事業目的をメインで活動される方にとって、強い味方となります。ショッピングモールへの出店なども、法人でないと出店できない場合がほとんどです。まずは個人事業の延長として合同会社を設立し、規模が大きくなったら合同会社から株式会社へ組織変更するという方も多いです。
②人を重視した定款自治をしたい場合
出資の割合によって利益配分を決めるのではなく、その会社にとって、その人物が、どれだけの配当を受ける権利があるのか、類型的な利益配分や機関設計をしたくない方にとって、画期的な設立方法といえます。
③とにかく安く設立したい方
株式会社のおよそ半額で会社設立ができるので、とにかく安く法人設立をしたい場合、合同会社はとてもオススメです。
よくある質問も併せてご参考ください。